駿河半紙の歴史と手漉き和紙技術の習得を目指して
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紙漉き体験

5月 29th, 2012 | Posted by admin in 報告 - (0 Comments)

製本という仕事柄、紙には縁がありましたが和紙に興味を持ったのは、グラフィックデザイナー原研哉さんの「情報を載せただけの紙の束はデジタルメディアに置き換えられる 書籍というメディアを選択する以上はその物質性に着目し、紙というマテリアルを最大限に生かすことが必要・・・」という言葉でした。
当日は何をするのかも分からず工房に着くと、内藤氏と2名の先輩はすでに準備を開始していました。その後、初めて見る内藤氏の紙漉きは「う~ん意外と優雅?というか簡単そう?」 先輩に続きついに私の番、You Tubeで何回か紙漉き映像は観て頭にイメージは出来ている。 いざ簀桁を舟に入れるとひんやり冷たい、そして持ち手に水圧を感じたのは覚えていますが、後は夢中でひたすら裏波を立てないように集中してあっという間に1日終了という感じでした。観光的な体験ではなく1日中紙漉きが出来る機会はあまり無いと思います。
後日送っていただいた紙を見たときは内藤氏の言っていた「貼るのが大変なんです」と下手な紙を貼る事が苦労なことを思い出しながらも一応満足。 1枚揉んでこんにゃく糊を塗り、もう1枚写経してみました。
やはり紙漉きという1工程だけでなく原料から出来たら「自分にとってさぞや素敵なものに会えるぞ」などと思ってしまいました。先輩達も親切で順番待ちのときの内藤氏とのトークも楽しかった。
新緑を楽しみながらの2時間半のドライブも良いものです。今は前回のイメージを忘れないようにしながら5月19日の参加が待ち遠しい。

駿河半紙技術研究会会員 埼玉県在住 水上 悦男

 去る11月19日、講師に書道家の渡辺墨仙先生を迎え、第2回和紙文化講演会が富士宮市立中央図書館で行われました。当日は台風のような酷い状況で、参加する人が少ないのではと、心配されましたが、先生のお弟子さんや駿河半紙技術研究会の会員の方が多数参加され、会場は満員の盛況でした。また、会場には先生の作品が展示され、その多様な作品にはとても驚きました。
私は、書道を習っているので、今回の講演会にはとても興味がありました。先生の話を拝聴するのは今回が初めてでしたが、先生の話はウイットに富み、ところどころにダジャレなども挟み、会場は笑いが絶えませんでした。もう少し話が聞きたいと思うほど、1時間が短く感じられる素敵な講演でした。内容は、まず、先生の生い立ち、書家になった経緯、現在の活動等の話があり、次に、作品作りの考え方や和紙に対する思いなどの話がありました。特に私が感心したのは、作品作りは1枚目で仕上げるというところです。もし、書いたものが気に入らない場合は、内容を変えたり、紙を変えたり、レイアウトを変えて仕上げていくそうです。私の書道の先生も日頃から、作品はほとんど1枚目で仕上げると言っています。もちろん私にはそんなことできませんが、これはやはり、先生の話の中にもあったように、がむしゃらに書き込んだ時期があったからだと思います。今更ながら、文武の道を極めるのは鍛練こそが大事ということを再認識しました。
第2部は、席上揮毫(きごう)が行われました。私は書道の先生以外の先生がリアルに書くのを見るのは初めてでした。先生のスムーズな筆運びと切れのある「かな」は驚愕でした。私も「かな」を習っていますが、とてもあのように淀みなく筆を動かすことはできません。先生の書かれる姿を見て思い出したことがありました。それは最近読んだ本(「ことばへの旅」 森本哲郎 著)の巻頭に書かれた、夏目漱石の「夢十夜」という小品の記述です。金剛力士立像で有名な運慶が、無造作に仁王を刻んでいるのを見ていた男に、隣の男が「あれは、木の中に埋まっているものを、ノミと槌で掘り返しているのだ。土の中から石を掘り出すようなものだから、間違うはずがない。」と、言います。それなら自分にもできそうだと思った男は、何本も薪を彫ってみますが、いっこうに仁王はあらわれなかったそうです。
私は先生にも運慶と同じように、筆を運ぶべき道筋が見えるのではないかと思います。そして、このような能力を得るには、やはり鍛練しかないのではと強く感じました。

尾崎 政志

紙張り体験記

8月 22nd, 2011 | Posted by admin in 報告 - (0 Comments)

今までに、数回の紙漉きの実技研修会に参加させていただいて一通りのやり方が分かってきたので、つい欲が出て、紙張りもやってみたい!と思い、今回は紙張りの実技研修も受けさせていただきました。
紙張りは、漉いてから圧搾してある程度の水分が取られた紙を、乾燥させるために、1枚ずつ板につけていく作業です。言葉で言ってしまえば簡単ですが、相手はとても繊細なもの(水を含んだ紙ですから…)です。紙の端に小麦粉を溶いて作られた糊をつけ、板を拭くところから始まって、1枚ずつ決められたところに張り、椿の葉(普段よく目にする椿ではなく、葉のギザギザが少ない山椿を使うそうです。)で紙の端を板にこすりつける(という表現が適切かどうかわかりませんが…)ところまで、いくつかの工程があり、不器用な私にとっては緊張の連続でした。
でも、そんな状況を察してか、講師である内藤さんは、教えてくださいながら気さくに声をかけてくださったので、あまり肩も凝らずに、作業を進めることができました。
今回の研修で一番難しかったのは、刷毛や椿の葉を使って板にこすりつけていく工程です。力を入れすぎると表面が毛羽立ってしまうし、力が弱いと板にうまく付かない…というところで、微妙な力加減がなかなかつかめませんでした。うまくいった!と思うとつい気が緩み、次は毛羽立ち寸前…。加えて上手く漉けていない紙を張ると、形がいびつなので、刷毛や葉が引っ掛かりやすくなり、細心の注意が必要でした。100枚近く張ったところでようやく、このくらいかな?と思い始めたところです。
どの手作業もそうだと思いますが、よい品物を作るため必要なのは、決まった工程を丁寧に正確に行うこと。そこが手作業の醍醐味でもあり、難しさでもあることが身に浸みました。

紙張りは約3時間かけてゆっくり行いましたが、和紙という素材に触れたときの温かさと神秘的な感じが何とも心地よく、触れているだけで癒される感じでした。パソコンや携帯など便利なものがあふれている現代の生活の中で、本物の和紙に触れることができるという経験は、とても貴重だと思います。

紙張りはここまででしたが、この後、内藤さんに天日に干していただきました。後日、完成した紙を受け取った時の、紙の手触りとぬくもりは、何とも言えません。

文責;四條里美(駿河半紙技術研究会会員)

紙漉き体験記

4月 28th, 2011 | Posted by admin in 報告 - (0 Comments)

今回初めて、紙漉きの研修に参加させて頂きました。
最初は作業の順番を覚えながら、ただ紙を漉く”動作”をすることで
精一杯でした。   流れはなんとか覚えられましたが、紙を漉くときの
水の重さがとても重くて、それを支えるのがとても大変でした。
”腕ではなく体全体で漉くように”と教えていただきましたが、
桁を傾けながら漉くことしかできず、桁をゆすって漉くのはとても
無理でした。 またこの研修に参加しながら、少しずつ漉けるように
なればと思っています。

後日、漉いた紙を送っていただき、なんとか紙になっていたので
とても安心しました。よくみると厚みが偏っていたり
荒いところもたくさんありましたが、和紙が持つあたたかい手触りが
感じられて、やっぱり和紙はいいなぁと思いました。
私は特に、”これに使う!!”といった大きな目的はないのですが、
日々の暮らしの中で、書いたり、折って包んだり、貼ったり・・・
いろいろな用途で使っていけたらと思います。それは実用的にも
使えるし、装飾したり趣味として、楽しみながらも使えます。
その使い方で和紙の良さをもっと引出していきたいです!

また今後も和紙についていろいろ勉強させていただきたいと思います。
とても静かできれいなところでの研修で、有意義な一日でした。

駿河半紙技術研究会会員・静岡市在住・梶山 直美記

紙漉き体験記

6月 22nd, 2010 | Posted by admin in 報告 - (0 Comments)

5月22日、手すき和紙工房にて紙漉きの実技講習会に参加しました。紙漉きはもちろん初めてのことです。
私は特別支援学校に勤務して20年以上たつのですが、今年度配属された高等部も作業学習の紙工班も初めて。そこでは、牛乳パックではなく、楮から和紙を作る学習が行われていました。冒頭でも書きました通り、紙漉きなんてやったこともないのに、生徒を指導しなくてはいけない…同僚に少し教えてもらったけれど、自信がもてない…何とかしなくては…。こんな思いでインターネットをあけていましたら―ありました。しかもとても近くに、和紙を漉いている工房が…。早速、非常識にもアポも取らずに工房を訪ねて、あれこれとお話を伺い、今回の実技研修や駿河半紙研究会のことを知り、どちらにも参加することにしたのです。
研修当日はとても暑い日でしたが、工房の中はひんやりとしていて気が引き締まりました。講師の内藤さんが行う準備から紙漉きまでの、無駄のない見事な所作動作を目の前で見せていただき、「どうぞ」の合図で実技研修が始まりました。3人の研修生が順番に3回ずつ紙を漉きしとづけまで行います。見よう見まねで続けると所作動作は少しずつ分かってくるのですが、紙漉きは何回やっても簾の上で紙がめくれてしまってうまくいきません。他のお二人は、上手に漉いているのに…。約2時間の練習の後、本番になるのですが、その直前に、(液を)汲んだら、少し落ち着くまで待って流す方がよいこと、手や腕だけでなく体全体使うつもりで漉くこと、という助言をいただきまして、そのとおりにやってみたら、できました!簾の上に平らになった紙が!!練習ではでこぼこだらけ、穴だらけの紙になっていたので、今回はできなくてもしかたないなあ…と半ばあきらめていただけに、嬉しかったです。(圧搾、乾燥をしていただいて、2週間後に出来上がった紙を手にしたときは、さらに嬉しかったです!)
結局本番でも、形もよく平らになったものは少なく、多少でこぼこしたり穴があいたりしていましたが、それでも30枚(1回に二枚できるので15回分)漉くことができました。できてもできなくても「またやりたい!」「次こそ!」と思いながらの4時間は、本当にあっという間でした。紙漉きの魅力に惹かれたからかもしれません。次回の8月の研修も、今から楽しみです。
記;四條里美

作品作りへ

2月 25th, 2009 | Posted by admin in 報告 - (0 Comments)

● 深謝
駿河半紙技術研究会の内藤会長様および小川事務局長様、このたびは私が通っている書道教室の社中展のお知らせを、ホームページや広報に掲載していただきありがとうございました。また、作品作りに関して、アドバイスやヒントをいただいたり、実際に社中展を見に来ていただいたり、大変感謝しています。
おかげさまで、今回の社中展も盛況のうちに終わることができました。
私の作品への反響も多く、今後の作品作りに参考になりそうな貴重な意見を得ることができました。

● 経緯
1年前の夏に、初めて手漉き和紙の工程を体験してから5回目の実技講習が8月にありました。なかなか裏波が立たないようにできない私は、少し焦っていました。
なぜなら、隔年で行われる書道教室の社中展があと2カ月に迫っていたからです。
私がこの駿河半紙技術研究会に入会した目的は、書道の作品作りの一環でした。
このままでは目的が達成できないのではないかと、不安のまま、今夏の研修が始まりました。今回の研修は、初日は紙漉き練習、2日目は本番で1日あけて3日目は紙貼というスケジュールです。
初日の参加者は私一人で、思う存分練習ができましたが、午前中は、やはり思うように漉くことができませんでした。試行錯誤というよりは、悪化していく状態でした。食事を取り、午後の練習を始めると、少しずつ汲込みが安定してきたように感じました。裏波も少なくなり、やっとコツをつかめたような気がしました。ただ、この大きさでは、紙の厚さが均一にできないので、作品にはまだ早すぎると思いました。
2日目の本番でも、今までやってきた中では最高のものができたと思いました。もちろん、まだまだ満足のできるものではないのですが…。
現状では半紙程度の紙も均一にできないので、今回の社中展ははがきサイズの和紙で作品を作ると決めていました。
この練習後、社中展の作品作りのことを内藤さんに相談しました。ちょうど、はがき作りの体験教室が1週間後にあると聞き、その後ならば手伝っていただけるということでした。
1週間後、はがき作りを行いました。簀桁が小さいので、それほど失敗なくできました。翌日、紙貼りを行い、その2日後、宅急便で完成品が届きました。
今回の私の作品は、映画の名セリフを色々な書体で書いてみようというものでした。
そして、その名セリフから連想される漢字1字を大きく書き、その余白にセリフを書き入れました。それを各一つずつ額装して9つ作り、3行3列に配置して展示してみました。(写真参照)
今回、クラフトとアートを同時に楽しめたのは、貴重な経験になりました。
今後は、作品の紙のサイズを少しずつ大きくできるように、実技研修を頑張りたいと思います。

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写真上段左より順に
酔…君の瞳に乾杯 『カサブランカ』
絆…イツマデモ、キミノココロニ 『ET』
挑…諦めるな。一度諦めたらそれが習慣となる 『がんばれ!ベアーズ』
壁…君の骨はガラスじゃない 『アメリ』
得…考えるな、感じろ 『燃えよドラゴン』
楽…人生はチョコレートの箱 『フォレストガンプ』
軌…道を知っていることと実際に歩くことは違う 『マトリックス』
凛…新しい褌をつければ、体だってキリッとするじゃないか 『男はつらいよ 葛飾立志篇』
授…運命というのは努力した人に偶然という橋をかけてくれる 『猟奇的な彼女』

尾崎政志

 

● 参加した経緯と目的
私が手漉き和紙に興味を持ったのは、7年ほど前に始めた書道に起因します。書の作品作りをしていく過程で、紙の重要性を感じ、できれば、自分が求める紙質やデザインの紙を自ら作ってみたいという思いが徐々に大きくなっていきました。ただし、具体的に何をすればよいのか、分かりませんでしたが、それを解決するきっかけを偶然にも見つけました。
それは、インターネットで何気なく”手漉き”を検索した時に、近所で手漉き和紙の展示会が行われるというものでした。はやる気持ちを抑えながら私は、会場の三島プラザホテルに早速出かけました。数十種類の和紙が展示された小さなギャラリーで、私は内藤さんに初めてお会いしました。
手漉き和紙を自作するにはどうすればよいかと、内藤さんに尋ねると、ちょうど『駿河半紙技術研究会』を設立して、実技研修を夏に実施すると聞き、即、入会を申し出ました。
その後、5月の末に『駿河半紙技術研究会』の設立総会が開かれ、富士宮市長をはじめとする多数方々が参加されました。行政や地域住民がともに参加するところは、さすが、紙作りの土地柄だなと思いました。

● 実技研修
私にとって、今回の実技研修が手漉き初体験でした。テレビや学校の授業などで、常識的な知識はありましたが、体験したこともなければ、実際に見たことさえありませんでした。気持ちが高ぶる中、実際の工程に沿って8日間の研修が始まりました。
初日…三椏 煮熟
2日目…アク抜き トロロアオイ準備
3日目…叩解 スクリーン
4日目…紙漉き練習(30×42 cmの2枚取り判)
5日目…紙漉き練習(54×100 cm判)
6日目…紙漉き本番(30×42 cmの2枚取り判)
7日目…プレス
最終日…干し板による紙貼り
紙漉きでは、汲み込みの作業が大変難しく、手首の返しが悪いため裏波が立ってしまい、失敗ばかりでした。目的の『自分が求める紙作り』には、まだまだ遠い道のりだなと思いました。その他の作業についても、手間隙がかかると知りました。
盛夏の中でしたが、目新しいことが多く、楽しかったので、あっという間の8日間でした。

今回の実技研修で、初めてわかったことは、紙漉きの作業にはまったく無駄がないということです。特に紙を漉いているときの一連の作業にはある種のリズム感さえ感じてしまいました。何百年という時をかけて、試行錯誤が行われ、無駄が削ぎ落とされていった結果が、今にあると思いました。
それから、この和紙は”地球にやさしい”ことです。洋紙のように、森林を伐採したり、漂白のための薬品を使用することがなく製造することができます。リサイクルも簡単で、環境負荷が低いといえます。もちろん、大量生産の難しさはあると思いますが…。

● 今後の課題
今回は、一通り手漉きの作業を学んだので、次回は色染めや紋入れなどのデザイン的な作業について、学んでみたいと思います。また、楮や雁皮での和紙作りにも挑戦してみたいです。

それから、これは私の個人的考えですが、日本独自の和紙の”技術の継承”ということはとても大事だと思いますので、若い世代への育成にも、ご尽力をお願いしたいと思います。伝統工芸は新しい考え方を注入していかないと、生き残ることは難しいと思います。そういう意味で、この『駿河半紙技術研究会』の存在意義は高いと思います。私も非力ですが、この伝統ある技術に新しい考え方を注入できるか、協力していきたいと思います。
よろしくお願いします。

尾崎 政志

5月26日(土)当工房において、駿河半紙技術研究会が
会員数43名のうち、約半数の方々のご参加を頂き設立されました。
遠路、東京、神奈川より、また県内では焼津、三島等より
ご出席頂きました。
富士宮市長、小室直義氏もご公務お忙しい中ご出席頂き
その上お言葉を頂戴いたしました。

実技研修を主に活動を予定しております。(詳しくは8月号で)
入会は現在も受付中です。年会費1000円をお振込みいただくことで
入会手続きの完了とさせて頂きます。入金確認後、諸資料を送らせて頂きます。

振込先   郵便振替  00830-7-137
柚野手漉和紙工房 内藤恒雄