● 参加した経緯と目的
私が手漉き和紙に興味を持ったのは、7年ほど前に始めた書道に起因します。書の作品作りをしていく過程で、紙の重要性を感じ、できれば、自分が求める紙質やデザインの紙を自ら作ってみたいという思いが徐々に大きくなっていきました。ただし、具体的に何をすればよいのか、分かりませんでしたが、それを解決するきっかけを偶然にも見つけました。
それは、インターネットで何気なく”手漉き”を検索した時に、近所で手漉き和紙の展示会が行われるというものでした。はやる気持ちを抑えながら私は、会場の三島プラザホテルに早速出かけました。数十種類の和紙が展示された小さなギャラリーで、私は内藤さんに初めてお会いしました。
手漉き和紙を自作するにはどうすればよいかと、内藤さんに尋ねると、ちょうど『駿河半紙技術研究会』を設立して、実技研修を夏に実施すると聞き、即、入会を申し出ました。
その後、5月の末に『駿河半紙技術研究会』の設立総会が開かれ、富士宮市長をはじめとする多数方々が参加されました。行政や地域住民がともに参加するところは、さすが、紙作りの土地柄だなと思いました。
● 実技研修
私にとって、今回の実技研修が手漉き初体験でした。テレビや学校の授業などで、常識的な知識はありましたが、体験したこともなければ、実際に見たことさえありませんでした。気持ちが高ぶる中、実際の工程に沿って8日間の研修が始まりました。
初日…三椏 煮熟
2日目…アク抜き トロロアオイ準備
3日目…叩解 スクリーン
4日目…紙漉き練習(30×42 cmの2枚取り判)
5日目…紙漉き練習(54×100 cm判)
6日目…紙漉き本番(30×42 cmの2枚取り判)
7日目…プレス
最終日…干し板による紙貼り
紙漉きでは、汲み込みの作業が大変難しく、手首の返しが悪いため裏波が立ってしまい、失敗ばかりでした。目的の『自分が求める紙作り』には、まだまだ遠い道のりだなと思いました。その他の作業についても、手間隙がかかると知りました。
盛夏の中でしたが、目新しいことが多く、楽しかったので、あっという間の8日間でした。
今回の実技研修で、初めてわかったことは、紙漉きの作業にはまったく無駄がないということです。特に紙を漉いているときの一連の作業にはある種のリズム感さえ感じてしまいました。何百年という時をかけて、試行錯誤が行われ、無駄が削ぎ落とされていった結果が、今にあると思いました。
それから、この和紙は”地球にやさしい”ことです。洋紙のように、森林を伐採したり、漂白のための薬品を使用することがなく製造することができます。リサイクルも簡単で、環境負荷が低いといえます。もちろん、大量生産の難しさはあると思いますが…。
● 今後の課題
今回は、一通り手漉きの作業を学んだので、次回は色染めや紋入れなどのデザイン的な作業について、学んでみたいと思います。また、楮や雁皮での和紙作りにも挑戦してみたいです。
それから、これは私の個人的考えですが、日本独自の和紙の”技術の継承”ということはとても大事だと思いますので、若い世代への育成にも、ご尽力をお願いしたいと思います。伝統工芸は新しい考え方を注入していかないと、生き残ることは難しいと思います。そういう意味で、この『駿河半紙技術研究会』の存在意義は高いと思います。私も非力ですが、この伝統ある技術に新しい考え方を注入できるか、協力していきたいと思います。
よろしくお願いします。
尾崎 政志