今回(6月1日)の実技研修では、私一人だったこともあり、内藤さんから、大きな枠で漉いてみてはどうかという御提案がありました。枠を見たときには、かなりの大きさに、果たして紙料を汲めるのか、不安になりましたが、これもまた勉強と思い、やってみることにしました。
枠は大きいために竹の竿に吊ってありますから、汲みこむのにそんなに重たくはなかったのですが、汲むコツがなかなかつかめず、結局最後まで、平滑に漉くことができませんでした。いつもの半紙2枚取りの大きさの枠だと、平らに漉けるようになってきていたので、枠の大きさが変わることによって、何かを変えなくてはいけなかったのにそれが分からなかったです。はじめと途中何度か、内藤さんの汲みかたを見せていただいたのですが、それでも、どこが違うのか分からなかったというのが、正直なところです。もしかしたら、竿のしなりを利用しなければいけなかったのに、それができなかったのかもしれません。
いずれにしても、初めに、内藤さんが「(大きい枠での研修を)勧めるのに迷った。」とおっしゃっただけあって、難しかったです。でもまた、機会がありましたらぜひ挑戦して、平滑な紙を漉いてみたいです。
ところで今回の研修では、紙漉きの実技の難しさとは裏腹に、紙漉きの道具の美しさを、改めて感じました。竿に吊られた枠は、全く無駄のない形で本当に美しいです。これらの道具を考え出して使い続けてきた先人に敬意を払わずにはいられません。
(文責 四條里美)
駿河半紙技術研究会の実技研修では、通常、紙料は三椏(みつまた)で行われてきましたが、3月16日に行われた研修会では雁皮(がんぴ)が使用されました。
手漉きでは雁皮の方が難しいと聞かされていたのですが、今回の雁皮を手漉きした感じは、三椏のそれとあまり違いは感じられませんでした。多少、雁皮の方が、水抜けが遅いかなと思われる程度でした。
数日後、天日干しされた紙が届きました。
触った感触は、三椏の紙より少し柔らかいというか、しなやかな気がしました。
表面は三椏より滑らかな感じです。でも、強度的には雁皮の方が上のようです。
実際に筆を落とした時のファーストインプレッションは『軽い!』でした。
滲みも少なく、文字の輪郭もシャープなので、かな書などの連綿となる文字を書くのに向いていると思いました。反面、文字が平面的(のっぺり)に見えるので、墨の濃淡や字の大きさに変化をつけて、立体的に見せる必要がありそうです。『キレ』のあるかな書が書ければ、とてもいい紙だと思いました。
駿河半紙技術研究会 会員 尾崎 政志
今回の実技研修は、雁皮を使った原料での紙漉きでした。漉き舟に入っている原料を見ても、いつもの原料(三椏と楮)との違いはよくわからなかったのですが、漉き始めると何となくいつもと勝手が違い、上手く漉けなくて、原料の違いを実感しました。
事前に、いつもより厚めに漉くとよいことや、原料が絡みやすくするために縦だけでなく横にも少し揺らした方がよいことなどの助言をいただいてやってみたのですが、枠の中の紙料がなかなか厚くならないのです。雑すぎるのかなと思って、いつもより丁寧に、回数も多く汲んだつもりですが、厚くならない…。更に紙床づけが難しく、上手く簀から離れないのです。初めて漉いた時のように、紙が崩れてしまうこともありました。雁皮を使ったのは初めてですから、1から出直し…ということだと思います。
でも、できた紙は美しく、表面はさらさら(私の勝手なイメージですが、和紙の表面は少しざらざらしているものだと思っていましたので、そのさらさら感にちょっと驚きました。)で、触るとパリパリっとした音がします。この薄さと手触りのよさが、紙の王様と言われる所以なのでしょう。まだこの紙を使ってはいないので、書き味までは分からないのですが、見ているだけ、触れているだけで満足してしまいます。
一言で和紙と言っても、原料によって細かい製作工程はもちろん、作るときの心配りからできた製品までこんなにも違いがあるということを実感した今回の研修でした。そして和紙の魅力を改めて感じています。
駿河半紙技術研究会 会員 四条 里美
- 会期 平成25年6月1日(土) 9:00~15:00
- 会場 柚野手漉き和紙工房
- 会費 6000円(紙貼代含む)
- 内容 基本動作の確認等。
- 原料 みつまた。
- 持ち物 髪の毛が落ちない工夫 昼飯 タオル 飲み物 等。
- 申し込み 内藤会長(電話 0544-66-0738)まで。
駿河半紙技術研究会 主催 平成25年度 総会および懇親会のご案内
- 会期 5月18日(土) 11:00~13:00
- 会場 志ほ川 バイパス店 0544-24-0100
富士宮市 城北町667 - 会費 1500円~2000円
- 内容 平成24年度 事業報告 収支決算 ご審議
平成25年度 事業計画 収支予算 ご審議
役員人事 ご審議 等 - 懇親会 美味しい 和そばを お楽しみに。
- 申し込み 事務局 小川 様 まで。富士宮市役所 産業振興部 観光課 0544-22-1155
- とき 4月14日(日) 10:30~14:00
- ところ 狩宿出井会館会場(富士宮市狩宿91)
- 問合先 0544-27-5240
「狩宿さくらまつり」 手すき和紙体験コーナーあります。
★駿河半紙技術研究会 主催 平成24年度 第4回目 実技研修会の ご案内
会期 平成25年3月16日(土) 9:00~15:00
会場 柚野手漉き和紙工房
会費 6000円(紙貼り代行費含む)
内容 基本動作の確認 汲みこみ。
原料 主にみつまたを使用。
持ち物 タオル 髪の毛が落ちない工夫 昼飯 飲み物等。
申込は内藤会長(電話 0544-66-0738)まで。
去る11月17日(土)富士宮市立中央図書館で行われた文化講演会(駿河半紙技術会主催
に参加しました。講師は郷土民俗学を専門に研究をなさっている八木洋行氏。講演会が
始まる前、会に参加していらした方が、会場に到着したばかりの講師に「お声を聞いて
八木さんだとすぐにわかりました!」と、積極的に話しかけておられるのを聞いて、私も
(そうそう)と、心の中でうなずいてしまいました。講師の八木氏はSBSラジオで
「すっとんしずおか昔話」を長い間やっていらっしゃる方。地元に伝わる昔話の解説などを
独特の語りでお話し下さり、思わず聞き入ってしまいます。このごろ私はFM局ばかり
聞いており、「すっとんしずおか・・・」もご無沙汰してしまっているのですが、以前に
聞いたお声をすぐに思い出すことができました。
さて、講演会の題は「駿河和紙の民俗学」。八木氏がお調べになった史実と照らし合わせ
た和紙のお話がとても面白かったです。駿河和紙については分からないことも多い・・と
いう前置きがありながらも、浅間神社が発行していた「浅間金」という紙幣があったことや、
ある貴族が今川義元の城に滞在した折、お土産に和紙をたくさん持ち帰ったこと、関東の
武士を中心に長い間使用されてきた「三島暦」は和紙に印刷されたものであったし、茶葉を
加工する過程で使われたり、花火の材料としても盛んにつかわれたりしていた。という事
を、当時の様子が目の前に浮かんでくるような語り口でお話ししてくださいました。また、
お話を伺いながら、私たちが住むこの地域にも脈々と和紙作りが続いていたことに思いを
駆せることが出来、感慨深かったです。
予定の時間はあっという間に過ぎ、もっと聞きたい!と思うところで、お話も終了。
機会がありましたら、ぜひ、続きのお話を伺いたいと思います。
(文責 駿河半紙技術研究会員 四条 里美)