駿河半紙の歴史と手漉き和紙技術の習得を目指して
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簀編み体験記

6月 30th, 2014 | Posted by admin in 報告

去る6月14日に柚野手漉き和紙工房に於いて『手漉き和紙 簀桁(すげた)製作研修会』が開催されたので参加して来ました。講師は、藤波和紙簀桁製造所の藤波柚美子先生です。
私はここ数年、手漉き和紙の研修会に参加してきましたが、紙を漉くことだけに集中していたので、道具についてはあまり考えたことがありませんでした。紙漉きにおいて、漉き簀は直に紙が触れる部分なので、商品となる紙の品質に多大な影響があるだろう、ということは講習を受けるまでもなく推測できました。しかし、紙の平滑性や水抜けを良くするために、どのような配慮がされているのか、具体的には分かりませんでした。
まず、桁(けた)の方の説明がありました。材料は耐水性のある木曽ヒノキが使用され、形状は簀を支える方式により、上げ桟・埋め桟があるそうです。埋め桟の場合、水抜けが多少悪くなるので、できた紙に桟のあとが残ってしまうようです。また、水抜けを良くするためや紙料が溜まるのを防ぐため、桁に溝が設けられています。留め金などは、真鍮・鉄などが使われているそうです。また紙料を汲み込んだ時に、水の重量を考慮して撓まないように最初から中央部分が少し高くなるように細工されています。
次に簀(す)の解説がありました。材料は竹またはカヤを絹糸で編んでいるそうです(端は強度を上げるためナイロン糸になっています)。漉く紙の大きさや厚さなどを考慮して竹ヒゴの太さを変えるそうです。また、竹ヒゴは長さが30~50㎝しか取れないため、幅の広い簀を編むときは、竹ヒゴを継いで使用します。つなぎ目が同じ場所になると強度が低下するため、互い違いになるよう配列して編む必要があります。漉き簀は簀桁に合わせるため1品1品寸法や形状が違ってきます。また、それを使用する職人の漉き方によっても寸法が変わってくるそうです。つまり標準品で製作できないので、すべての工程が手作業になってしまいます。
最後に、簀編みの体験ありました。作業台の前に座ってみると、あまりの細かさに目が眩みました。単一な作業ですが、間違えて編んでしまうと、やり直しがきかないので緊張感が続きます。更に編む強さを一定に保たないと簀の平滑性が保てないことも分かりました。1本編み込むだけでとても疲れたので、簀を1枚編むことを考えると、気が遠くなりそうでした。今回の受講により、漉き簀の製作は、細心の注意を払う作業であり、かつ忍耐が必要であることが分かりました。また、この仕事ができる人も、年々少なくなっているようです。

尾崎 政志(駿河半紙技術研究会 会員)

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