【柚野手漉和紙工房】内藤恒雄
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ドイツ紀行 3rd 2016年9月23日(金)〜10月7日(金)
 去る9月23日〜10月7日の15日間、「ドイツベルリン技術博物館」の招請を受け、「日本の優れた手漉き和紙技術」実演のためベルリンを訪問しました。3度目となる今回の渡独には、「駿河半紙技術研究会」の助成を頂きました。 
 今回の訪問は、各受け入れ側の皆さまのご厚意により大成功でした。企画も時期を得た内容だったと思います。ドイツ滞在中は、博物館のゲストハウスを利用させて頂きました。前回の2000年と同じ505号室で、ベルリンに戻ってきた感覚でした。冷蔵庫も新しく設置され、飲み物や食料品を保存できるので、自室での食事が前回より充実しました。

 今回、特にお世話になった4名の方に、ここで感謝とお礼を申し上げます。
◎ ガンゴルフ・ウルブヒト様
◎ ドイツベルリン技術博物館 副館長 ヨゼフ・ポッぺ様
◎ ベルリン日独センター文化部部長 河内彰子様
◎ 駿河半紙技術研究会 小川貴士事務局長様
 無事、柚野に戻ることができ、ありがとうございました。

 下記の4項目は、たいへん有意義な内容でした。
1. ガンゴルフ・ウルブヒト氏のアトリエで2回のワークショップ開催
2. ベルリン日独センターの講演会および展示会
3. ドイツベルリン技術博物館での手漉き和紙の実演会
4. ガンゴルフ・ウルブヒト氏の新しいアトリエ訪問

1. ガンゴルフ・ウルブヒト氏のアトリエで2回のワークショップ開催
@ 1回目のワークショップ
* 9月26日(月) 10:00〜18:00 6名参加
* 9月27日(火) 9:00〜15:00 6名参加
* 9月28日(水) 9:30〜17:00 5名参加
参加者
手漉き紙制作者、紙布作家、修復家、製本家
内容
A) 「こうぞ煮熟」「アク抜き」「キズヨリ」「手打ち」「プレス」「板干しによる紙貼り」
B) 紙漉きのサイズは300×420、300×800、600×990の3種類
C) 簀桁は1998年来日中、ガンゴルフ氏が収集した道具
D) 手漉き和紙制作の「流し漉き技法」の汲みこみの難しさを、体感して頂きました。
E) 自分が持参した手漉き和紙の説明

A 2回目のワークショップ
* 10月4日(火) 10:00〜18:00 2名参加
* 10月5日(水) 9:00〜17:00 3名参加
参加者
修復家・製本家・書家
内容 
A) 9月27日(火)開催の講演会出席者 2名参加
B) 「キズヨリ」「手打ち」「プレス」「板干しによる紙貼り」
C) 紙漉きのサイズは300×420、300×800、600×990の3種類
D) 手漉き和紙制作の「流し漉き技法」の汲みこみの難しさを、体感して頂きました。
E) 自分が持参した手漉き和紙の説明

ガンゴルフ・ウルブヒト氏のアトリエでのワークショップ
ガンゴルフ・ウルブヒト氏のアトリエでのワークショップ

2. ベルリン日独センターでの講演会および展示会 (9月27日(火)19:00)
* 講演会
会場の定員を超える200名以上のご参加を頂き、椅子が足りなくなったそうです。大変な、盛り上がりでした。
12項目をご説明した中、6項目を明記します
  1. 2014年11月「和紙・日本の手漉き和紙技術」のユネスコ無形文化遺産登録と「内藤恒雄手漉き和紙独立40周年」を記念し ドイツ訪問を企画。
  2. 紀元前、中国で紙が発明され、日本へは朝鮮半島を経て6世紀頃伝承し、9世紀頃、粘剤(トロロアオイ等)を使う事が考案され「流し漉き技法」を確立した。
  3. 世界中で、手作業の紙が作られている訳ですが、日本の手漉き和紙の品質は世界一と考えます。それは日本の匠が特に優れているのではなく、地球上における緯度・経度に位置する日本の産品がすぐれている為。こうぞ・みつまたは東南アジアに広く分布している訳ですが、品質共に日本産が一番だと思う。なぜなら、四季があるから。
  4. 用水が大事。欧州は硬水、日本は軟水、特に富士山の伏流水はより新鮮。(硬水だと 粘剤トロロアオイは効かない)
  5. 日本国内の手漉き和紙制作者の推移
    平成05年…440軒  
    平成15年…300軒  
    平成25年…160軒
  6. 国内での流通は和紙問屋さんが全てを仕切っていて、制作者自体では売れなかった。

* 展示会(センターのロビーにて開催)

 前回の2000年の時も、見本として自分の手漉き和紙を持参したのですが、ガンゴルフ氏のお取引先の版画家を訪問した時、全てお買い上げ頂いたため、一般の方に見て頂けなかつた事が残念だったので、今回は安堵しました。
 今回用意した紙は、こうぞ紙より制作が難しい、国産みつまたと国産がんぴを使用した手漉き和紙を中心に12点をご説明しました。鉄板乾燥機を使用すると、こうぞ紙などは「ケバタチ」が気になるのですが、板干しだと、そういう事はなく「ツルツルとした」感触があります。特に「板干しによる天日乾燥」「薬品漂泊ではなく生成」を 強調しました。

ベルリン日独センターでの講演会および展示会
ベルリン日独センターでの講演会および展示会
ベルリン日独センターでの講演会および展示会
ベルリン日独センターでの講演会および展示会

3. ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
* 9月29日(木)11:00〜16:00
* 9月30日(金)11:00〜16:00
* 10月1日(土)11:00〜15:00
内容
自分が見本を見せ、参加者に広く体感を呼びかけました。手漉き和紙制作の「流し漉き技法」の「汲みこみ」の難しさを、体感して頂きました。前回の2000年の時は、技術博物館2階の欧州の手漉き紙のコーナーの奥でしたが、今回は、1階の中庭の奥で、見晴らしが良い部屋で、沢山のお客様で盛況でした。

ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会
ドイツベルリン技術博物館手漉き和紙の実演会

4. ガンゴルフ氏の新しいアトリエ(ドイツ北部)訪問
* 10月1日(土)
15:30 ベルリン技術博物館をタクシーで出発
15:50 ベルリン中央駅 到着
16:32 ベルリン中央駅 出発
19:16 グライフスヴァルト駅 到着
19:40 ルドビィクブルクのガンゴルフ氏の住まいに到着
* 10月2日(日)
ルドビィクブルク住まい近くを散策
ブィク港 散策
グライフスヴァルトのプラザでりんごジュース作成を見学
* 10月3日(月)(ドイツ国民祝日)
午前中 森林散策
15:00 ルドビィクブルクを車で出発
19:00 ベルリン技術博物館到着
古民家をリホームし、ワークショップが出来るアトリエとして再利用の計画
ルドビィクブルクは、静寂でステキな空間でした。

5. その他・余談
* 東京新聞・産経新聞・ベルリンTV局の取材を受けました。
* 今回は、ベルリンでご活躍の多くの日本人にお会いしました。
* ベルリンマラソン、ベルリン大聖堂、シュプレー川遊覧船、国立美術館を楽しむ。 
* 新しい出会いがあり、条件が整えば、再度ベルリンを訪問したいと思いました。
* 今後とも日本独自で世界に誇れる「手漉き和紙」のスバラシサを説明していきたい。

 

* ドイツ国立ベルリン技術博物館のホームページへのリンク *

Traditionelles japanisches Papierschöpfen

Exhibit of the Month September 2016

内藤恒雄講演および対話サロン「手すき和紙――日本の紙の芸術」

 
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