【柚野手漉和紙工房】内藤恒雄
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フランス紀行
 
フランス紀行
国際交流基金・フォンダシオン・メゾン・デ・シオンス・ドウ・ロム(フランス人文科学研究所)・ルーブル美術館等の助成を受け、2011年9月10日(土)〜2011年9月17日(土)までフランスに手漉き紙の調査・訪問しました。

「百聞は一見にしかず」
今回のお話は、2010年10月・駿河半紙技術研究会・副会長をお願いしている増田勝彦氏からのお誘いからです。国の内外を問わず、「手漉き和紙」という「お仕事」の「素晴らしさ」をご紹介する事に今後とも努力するつもりです。

9月12日(月)パリ・フォンダシオン・メゾン・デ・シオンス・ドウ・ロム(フランス人文科学研究所)6階604室にて・修復家約80名参加。
「手漉き和紙の特徴の一つ、特に打解の工程に付いて」口頭発表。
日本の伝統的かつ正統的な制作方法を踏襲しつつ自分の考える制作方法でご説明をしました。日本独自で世界に誇れる手仕事「手漉き和紙」は1300有余年の歴史を有し、各時代に使用方法が変化し、手漉き和紙の内在する「命」が存在する限り半永久的に伝承するでしょう。2010年11月現在200軒まで激減しております。

9月14日(水)15日(木)パリよりTGVで2時間強・西部アングレームの17世紀から操業が続いいているムーラン・ビェルジュ手漉き紙工房訪問。39年間従事しているジャック・ブレジュー氏よりご説明を受けた。特に原料となる大麻・リネンの原料処理に大変興味をもった。自分が行なっている処理方法と大きく違う。自分の考える品質の高い手漉き和紙は靭皮繊維を痛めない様に注意する点にある。一番大事な事は、木の皮を煮る事に尽きる。煮えていない部分をいくら処理しても処理出来ないからである。ジャック・ブレジュー氏の原料処理は長い時間を有しエネルギーの面からも一考。自分としては原料処理する前に煮熟方法を取り入れ、堆積発酵したらどうかと思った。

9月15日(木) アリアンヌ・ドゥ=ラ=シャペル女史(ルーブル美術館紙本作品部研究員)からサイジングのご説明を受けたのですが、自分が考える手漉き和紙は繊維の結合体だけど、いかに木の皮の養分を紙に残すかによって滲み具合・書き味等が異なる為、原料処理が面白いです。

9月16日(金)パリ・ルーブル美術館を訪問。
ルーブル美術館・紙本修復室で持参した手漉き和紙の御説明
あまりの大きさにただただ驚くばかり。自分達は美術館本館ではなく紙本修復室を訪問し17世紀の美術品の御説明を受ける。日本から持参した当工房の手漉き和紙に付いて御説明をしました。

今回の紀行を体験し思った事は二つ。一つが美の殿堂フランスにおいて手漉き紙に対して認識の低い事に驚いた事。もう一つが自分がいかに恵まれていること。独立35年の若輩者が年間の御注文を頂いていること。

最後に今回のプログラムを作成したフランス側のバレンチィ−ヌ・ヂュバール女史(ルーブル美術館紙本作品修復室長・紙本修復家)、日本側の川村朋子女史(山領絵画修復工房・紙本修復家)ご苦労様でした。
ルーブル美術館・紙本修復室の外観の前で
今回フランス側では大変評判が良いとのこと、来年・2012年9月に日本で開催の予定です。当工房も会場の一つになる予定です。第二のリーマン・ショックの危険性のあるなか助成金がおりるのでしょうか。
*資料:日本とフランスにおける手漉き紙の技術 :その理解、使用、保存
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