繊維が一本一本バラバラになるように水の中で攪拌(かくはん)します。


「次は、叩解(こうかい)だよ。」

叩き終わった原料をバケツに移す。
ビーターと呼ばれる叩解機にはすでに8分目まで水がたまっていた。

「これはナギナタビーターというんだよ。日本独特で刃の形がナギナタに似ているところからこの名前が付いたんだ。
うちでは主に楮(こうぞ)の原料のときに使っているんだよ。 もうひとつホーレンダーというビーターがあって、それは三椏(みつまた)や雁皮(がんぴ)の時に使っているよ。」




「どのくらい時間がかかるんですか。」

「ホーレンダーの場合、三椏や雁皮は約20分、ナギナタの場合は楮で約15分かな。」

スイッチを入れるとナギナタの刃が回りだし、パシャパシャと水を切る規則正しいリズムをきざみ始めた。
叩解というのは、今まで束になっていた繊維を水の中で一本ずつバラバラにほぐしていく作業である。
昔ビーターのなかった時代には、手打ちした原料を漉舟に入れ馬鍬(まんが)という道具でひたすら混ぜていた。
今ではほとんどの所でビーターを使うか、スクリューのような道具で漉舟の中の原料を攪拌(かくはん)し繊維をほぐしている。

「この作業をしていると、煮熟、あく抜き、塵取りの良し悪しがはっきりわかるよね。」

バケツ1杯の原料をビーターに入れていく。
パシャパシャという水の音と共に、はじめは固まっていた原料が流れてくるたびにほぐされていく。
所々、木の皮の形が残っていたものも、5分もするとひつじ雲のようになり、
棒ですくってみると所々に繊維の塊が付いていた。

それがしばらくすると繊維が一本一本並ぶようになった。
何度か棒ですくって繊維のほぐれ具合を確認した後スイッチを止めた。
ビーターの栓を抜きドレーナーという金網でできた箱に落としいれる。
ザザッーという音と共に原料は流れ落ち、水分は流れ、繊維だけがドレーナーに残った。