駿河半紙の歴史と手漉き和紙技術の習得を目指して
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「内藤恒雄氏 地域伝統文化功労者表彰受賞 祝賀会」に参加して

12月 31st, 2013 | Posted by admin in 報告

駿河半紙技術研究会 会員 四条 里美

去る3月に、内藤氏が「地域伝統文化功労者」に選ばれて表彰されたので、駿河半紙技術研究会の5月の総会で、祝賀会を計画したい、計画しなくては…というお話になりました。私も、昨年度から研究会では広報を担当するようになりましたので、何かお手伝いしなくては…と思ってはいたのですが、事務局から祝賀会計画の素案を示されたときに、「司会をやってほしい。」と言われたのには驚きました。仕事柄、人前でお話をする機会は何回もありましたが、祝賀会というおめでたいお席には出席したことはありませんから、そのようなお席での司会の経験も皆無。そして何より、研究会のメンバーをはじめ、祝賀会にいらっしゃる方々のほとんどを存じ上げなかったからです。加えて、頼もうと思っていた方(プロではないのですが、司会のお仕事が好きで、頼まれてはよくやっていらっしゃるそうです。)のご都合が合わなかった、という裏事情もありまして、本当に、寝耳に水…といった状態でしたが、せっかくのご指名でしたので、引き受けることにしました。
そのあとは事務局の方のご尽力で、祝賀会場や内容、出席なさる方、などなど短期間で次々と決まっていきましたが、出席者の肩書を見たときに不安が募りました。名士がずらりと並んでいたのです。
司会の原稿は、祝賀会の開催を中心に進めてくださった渡井さんが作ってくださるということだったので、少しは気が楽だったのですが、それでも一回目の原稿をいただいて目を通した時には、思わず図書館へ走りました。そこで、司会についてのノウハウが書かれた本を借りて「祝賀会」の部分を熟読しました。「格調高く…」というキーワードに、思わず苦笑です。また、敬語の使い方を間違えないように、例文にも目を通したり辞書で調べなおしたり、紹介するお客様の肩書やお名前も間違えないように、自分が読みやすくするために原稿を打ち直しました。といっても、根がそんなに几帳面ではないので、結局、原稿の打ち直しができたのが1週間前、数回声に出して練習しただけで、当日を迎えてしまいました。予想はしていましたが、当日の変更がいくつかあり、間違えないように、大きな文字で訂正し、できるだけゆっくりしゃべりました。(早口だとよく言われるので。)
祝賀会前半は記念講演で、佐野美術館長の渡辺先生のご講話でした。そこまで振ってしまえば、しばらく司会の仕事は休憩です。始まって間もないのに、休憩をとってしまい、渡辺先生の和紙を使った古写経についてのお話を、あまり聞いていませんでした。(本当にもったいないことです。)でも、巻物になっている古写経の実物を間近で見せていただきながらの解説が始まったので、後ろの方からのぞかせてもらいましたら、『三蔵法師』や『足利尊氏』の文字が目に入り、びっくり。渡辺先生も、なぜ佐野美術館にあるのか分からないけれど、おそらく明治時代の廃仏毀釈の混乱で、このような貴重な品物が全国の寺院から流出してそれが巡ってきたのだろうとおっしゃっていました。写経を見ればその時代背景も推察できるらしく、文化財としてはかなり貴重な資料らしいです。書体や装丁の違いで時代が分かるようですし、また紙は大変貴重で庶民ではなかなか手に入らなかったため、膨大な量の写経をすると決めたお坊さんは寄付を募りながら一生掛けて写経したものもあるようです。古いものでは、線を引く人、下書きをする人、清書をする人、装丁をする人などかなり細かい分業で作られたものも残っているようです。さらに、紙の研究の第一人者の増田先生もお越しいただいていましたので、渡辺先生からの問いに、増田先生が「多分…」ということで、紙の材料の違いについても解説してくださいましたことは、とても興味深かったです。返す返す、きちんと聞いておけばよかったと、後悔しきりです。
続く祝宴の方も滞りなく進みました。名士ばかりなので、会場の雰囲気もまさに「格調高く」て、壇上でお話しされる方が、とてもお上手で感心してしまいました。あっという間の2時間でしたが、心からお祝いできた会だったと思います。
お開きになってから、内藤さんのご親族を始め、何人かの方々に声をかけていただき、知らない方ばかりだったはずなのに、終わった時には、すっかり関係者の一人になった気分でした。なかなか体験できないことをさせていただき、これも何かのご縁と思うと、とてもありがたかったです。

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